

Weaving team
織職人チーム
伝統である甲斐絹(カイキ)をベースとした、高密度で繊細な絵柄を織り上げる技術を継承する織り職人チーム。
国内では他にあまりない、大口ジャカード織機を保有し、最新技術と伝統の技を使いこなすことができる職人集団です。

織機と対話する日々の中で
interviewee:小俣達也
槙田商店で織機と向き合い続ける織物職人の小俣達也さん。
1万2000本の経糸を操り、わずかな誤差も許さない、繊細な織機を任される彼に、仕事の難しさとやりがいを伺いました。
Q. 入社のきっかけを教えてください。
もともと手を動かして何かを作る仕事がしたくて、織物工場の槙田商店に興味を持ちました。でも実際に織物を作る部署に配属されて、最初は「機械が織るの!?」って驚きましたが、機械が織るために糸の準備やセット、織りの調整まで一貫して行うため、常に緊張感がありますね。現在は6〜8台の織機を3人で管理をしながら、服地と傘生地の両方の織物を織っています。


Q. 織機の操作には、どのような難しさがありますか?
織機の“クセ”を読み取ることも大切です。2丁(2色の色糸を使う)で織っているところに4丁で織ったら織れない、この織機では織れたのに、同じ条件で他の織機で織ったら織れない、というケースもあります。レピアと呼ばれる部品のコンディション次第で、緯糸(ヨコイト)がうまく通らないで経糸(タテイト)をズバッと切ってしまうなんてこともありますし、柄に乱れが出たりする場合があります。ですから、織機の掃除やグリスの差し方、ギアの締め具合まで、日々のメンテナンスは欠かせません。


Q. 新柄を織るときに工夫していることはありますか?
新柄ではパターンの組み方や密度が変わるので、撚り付け(古い経糸と新しい経糸を繋ぐ作業)や調整に時間がかかります。経験だけではどうにもならない部分もあるので、「やってみなければわからない」というのが正直なところです。重口の織物(経糸がたくさん上がる柄)になると負荷が増して織機が壊れてしまうこともあるので、織る前に見極めることや織機の特性を理解しておくことも重要です。織機にも性格があるので、その柄に合いそうな織機で織ることも大切です。ただ、織機が埋まっていることもあるのでスケジュール調整が難しいですね。


Q.特に難しい織物の種類があれば教えてください。
ストレッチ糸に傷を作ることなく織るのは特に難しいですね。織りやすいように糸が糊付けされた状態で届くので、経糸を捌く作業工程で糸をうまく扱わないと、織るときに糸が一斉に動いて傷ができる場合があります。ゴムにポリエステルが巻いてある糸なので、経糸をさばくときにも注意が必要です。織っている時にゴムが切れていたとしてもわからないので、特に細心の注意を払っています。
無地の生地も、糸のコンディションや織機の当たりスジなどがはっきりと生地に影響するので、難しいですね。
また、ヨコ糸の素材が複数ある生地などは、糸の素材や番手(糸の太さ)が違うことで調整具合が異なるので大変です。


Q.他にもうまく織るための工夫はありますか?
冬場は特に気を使います。冷えると織機の動きが悪くなったり、糸が硬くなって切れやすくなってしまうので、暖房を入れて帰ることもありますね。織物を織るためには湿度や室温も影響するので、微調整が大切です。
電子系だと、基板の故障で、織れなくなってしまうこともあります。経験を重ねると、ちょっとした異音や振動にも敏感になります。
ジャカード装置は熱を持ってはいけないので冷却のファンがついているのですが、そのフィルターが埃で目詰まりするので、きれいに掃除しています。


Q. やってて「よかった!」と感じる瞬間を教えてください。
できるだけ作業は時短を心がけているので、約1万2000本の経糸をつなぐ撚り付けの作業が、準備からの時間も含めて通常よりも早いペースの、最短2時間50分で全ての糸が結び終えられた時、心の中で「今日は自分を褒めてあげよう!」って思いました(笑)
自分は織物を織っているだけだと思っていたので、スタッフミーティングで「織り手はクリエイター」「織り手さんがいなければ織れない」って言ってもらえた時、周りに認めてもらえているのだなと嬉しくなりました。


Q. 休日はどのように過ごされていますか?
自然の中でぼーっとする時間や、手を動かす作業でリフレッシュして、休日はできるだけ心と体をほぐすようにしています。
Q. 最後に、この仕事をやってて「よかった」と感じる瞬間は?
純粋に、何もトラブルがなく、生地がきれいに織り上がったときですね。
新柄のときは緯糸の準備やセットに時間がかかったりします。営業との納期調整や在庫確認も含めて、準備段階からスムーズに進んでいたとしても、最後まで織れるとは限りません。だからこそ、織り終えたときの達成感は大きいですし、やはり出来上がった織物を手にした方に喜んでいただけるのが喜びですね。

