PEOPLE
Made by the neighbors.
傘職人チームに聞く、槙田の物づくり
西桂・郡内に支えられている槙田のチームワーク
傘の仕事に携わってこの道30年クラスのお二人と6年目にして傘生地裁断のプロとして活躍する若手職人が語る槙田の傘の魅力とは。
Q:みなさんが槙田商店で働き始めたきっかけは?
菅谷部長:基本みんな近所じゃない?
ちかさん:そうですね。職人もスタッフも近所の人が多いですね
高尾君:僕も地元なのですが、10年間東京で働いた後に地元に戻ってきたときに槙田商店に就職しました。
Q:槙田商店に決めたきっかけは?
高尾君:生地織り担当の募集があったのですが、社長に会社内を案内いただいた時に傘制作現場もご紹介いただいて傘づくりを選びました。パートの方が同級生のお母さんだったりと仕事を始めてすぐに環境に馴染みやすかったです。そんな槙田商店のアットホームな会社の雰囲気に加え、傘づくりの工程の多さや奥の深さに魅了されました。
菅谷部長:ちょうど高尾君が入ってきた時って、パートさんも含めて定年を迎えて新しいスタッフを補充しようっていうタイミングだったよね。
高尾君:そうなんです。だから僕の先輩はちかさんなので、間がぐっとあいた大先輩(笑)。
ちかさん:30年前とかは量産型の製造が主だったので、傘現場にも7〜8人いて、一色あたり何百本も作るような体制だったけど、その後、時代が変わりお客様のご要望も変わっていくにつれて体制が変化したんですよね。
菅谷部長:当初は自分たちで傘生地の企画からデザイン、制作、サンプル作りまでして、傘生地自体を売り歩いたものだけど、その後ライセンスの仕事が増え、企画を持ち込むというよりもお客様の要望を忠実かつより良く仕上げて形にする時代が来たんだよね。でも、最近ではライセンスと違ってもっとふわっとしたアイディアをいただいて、それを深めたり広げたりして形にしてご提案するような形に変わってきた気がするね。
Q:槙田商店の企画から製品までできる強みが生きてきたということですよね。
高尾君:そうだと思います。傘といっても、骨の本数から丸みまで様々。部品と傘地の相性もあったりするので単純なものではありません。槙田では生地を織ることから裁断、仕上げまで自社工場を軸に西桂や富士吉田・都留などの近隣職人さんたちと連携して一つ一つ仕上げていけるからこそ、ふわっとしたアイディアをいただいても、それを傘として仕上げるご提案が可能なんだと思います。
菅谷部長:より安い加工費で海外に生産を移していった同業他社がいる中、うちの社長は一貫して、メイドイン西桂を信念にしてきたからね。
ちかさん:生地から製品まで自分たちで作っていけることを守ってきたからこそ今の対応力があるんだと思います。
菅谷部長:なんか最近、傘を作りたいっていう企業やプロの方からの依頼が増えてるんですよ。
Q:廉価な傘が氾濫する中、傘を企画?それはなぜでしょう?
菅谷部長:いい傘が市場にないんじゃないかなあ。Spiralで展示するとこんな傘見たことないです!なんておっしゃってくださるお客様に出会いますよ。
高尾君:2〜30代の若い方から年配の方々まで皆さんお褒めくださいますよね。
ちかさん:うちの傘は一目でわかります。街中でもうちの傘って目に止まっちゃう。
そんな話をしていたら、現場にいた槙田スタッフから"槙田の傘目撃情報"があれこれ聞こえ、飛び入りでインタビューに参加も!
常務:一度電車で目の前に立った女性がうちの傘を持っていて。思わず嬉しくて声をかけそうになりましたよ。
スタッフ:車で走ってたら、うちの1866をさしている方がいて。あの光沢や色合いは絶対うちの傘だ!って盛り上がってしまったり。
高尾君:傘が仕上がって嬉しくて、買っていただけて嬉しくて。そして街中で見かけた瞬間、最高に嬉しくなりますね。
菅谷部長:ずっと大切に使って欲しいから、うちでは修理まで含めてお付き合いいただきたいと思っているんですよ。畳み方も含めて、傘をずっと使えるようなそんなアドバイスもさせていただけたら嬉しいですね。
Q:買うのに迷うほど槙田の傘ってかなり種類ありますよね。
菅谷部長:数え切れないほどありますよ!笑。さらに増え続けているよね。高尾君、新しい型とか作ってるでしょ?
高尾君:基本の傘の型があるんですけど、生地の伸び具合や厚み、この生地だったらもう少しまるみのある傘の方が綺麗だななんて言うように調整をしていく感じですね。
Q:さきほど拝見しましたが、傘生地って手でカットしているんですね。てっきり機械でカットだと思っていました。
高尾君:手の方がある意味正確なんですよ。結局傘って生地も様々、形も微妙に違ったりなど調整が必要なものが多くって。機械よりも人の目と手、使い慣れた包丁が一番だったりします。
ちかさん:高尾君、かなり使い込んだナイフ使っているよね。
高尾君:そうなんです。普通ここまで刃が短くなってしまうとお役御免ですが、生地によって歯の長さが短いものが向いていたりするので僕は使っているんですよ。
Q:これだけの商品数と細やかな対応、どうやって管理しているのですか?
菅谷部長:ちかちゃん、だよね。
ちかさん:いえいえ、みんなの連携ですよ。
高尾君:ちかさんが営業さんからのオーダーや急ぎのスケジュールなど全体を把握してくれているので助かります。あと、傘作りって一つ一つの工程の積み重ねなので、申し送りを丁寧にすることは大切だと思います。
菅谷部長:この現場だけでなく、近隣の職人さんに途中の縫いなど仕上げてもらいに出すからね。そんな時に職人さんの縫い方の癖に合わせてこの傘はあの職人さんに、とかあの形はあっちの職人さんにと振り分けたり。そして帰ってきた傘に仕上げをして、完成!
高尾君:スタッフも近所ですが、職人さんも近所。
菅谷部長:西桂や近隣地域の人たちが信頼でつながって丁寧に作る、それがうちの傘だから。高尾君が裁断の専門であるようにそれぞれが自分の専門を極めていきつつも、他の工程すべてを理解し、次の人がよりやりやすくしていこうとすること。そうやって多くの人の手と心がけで生まれる傘。
ちかさん:しかもうちの傘は織生地だから色と張りが綺麗ですよね。
高尾君:先染めの糸と糸の組み合わせで生まれる色と柄にしか描けない深みは別格だと思います。
菅谷部長:雨の日を美しく彩るようないい傘をこれからも作っていきたいね。そしていたる所で槙田の傘を使ってもらえて喜んでもらえたら嬉しいですね。