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PEOPLE

We value being a store. A future filled with Makita fabrics in our daily lives

商店であることを大切に。暮らしに槙田の生地が溢れる未来を

2022年7月より槙田商店の6代目社長に就任した槇田洋一と申します。前社長は相談役として残っており、今まで培ってきた槙田商店の良さを伸ばしながら、今までやったことのないことをやっていく、その過程で社内のみんなと新しい道を作っていけたらと思っています。

Q:「いつから社長になることを考えていましたか?」

大学受験前に弟と二人で呼ばれて、兄である私は家業を継ぎ、弟は自由にしなさいと言われたんですよね。そう言われても正直まだ自分の立場をそこまで意識していなかったのですが、大学時代の友人がうちに遊びに来た時に、「すごい事をしてるんだね」と褒めてくれたんです。そこでうちの仕事の大切さに気付かされたというか、家業を継ごうと決心したんです。なので、将来槙田商店を継ぐことを前提に卒業後、外の会社で経験を積み、2009年のちょうどリーマンショック後に戻ってきました。意識していなかったと言いましたが、実は小学校の卒業式の夢で社長になると言った記憶も残っています。もちろん社長をやることに不安はありましたが、それよりも戻らなきゃ、家業を継がなきゃという使命感の方が強かったですね。

Q:「槙田商店の仕事を始められてどうでしたか?」

特にテキスタイルの専門の勉強とかはしたことないですが、元々ファッションは好きだったんです。服自体も好きですが、その中でも職人さんのようにモノ作りに専念するより、直接お客様とのやりとりをさせていただける接客や営業に魅力を感じました。

なぜならそこではお客さまが何を望んでおられるかをお聞きしたり、着ておられるお洋服から想像したりすることができるからです。しかし、槙田商店のお仕事は直接エンドユーザー様に接するというよりも、クライアント様のご要望をお聞きして生地や製品を作るOEMが多くの部分を占めていました。もちろんいただいたオーダーに槙田商店はきちんと応えてものづくりをすることに間違いはありません。でもOEMだけでは難しいです。やはり使ってくださる方の顔が見えにくいですから。さらに景気の影響を大きく受けたりと、時代的にもOEMだけでは厳しくなってきたこともあり、自社でのオリジナル製品の開発を始めたんです。

Q:「槙田商店は個性的な傘がある、そんなイメージがあります。」

当時、山梨県郡内の織物産地として東京造形大学とのコラボレーションが始まったこともきっかけになりました。私たちは5年目から参加をしたのですが、今も社員として活躍してくれているデザイナーもそのコラボレーションがきっかけで入社してくれたんですよ。製品って作るだけでなく、売る楽しさがあるんです。生地は材料ですが、製品はそのまま使っていただけるのでコミュニケーションが明確ですよね。せっかく生地から作れるのだから、もっと製品になった時に他にはないものを作っていきたいと企画、デザイン、生地生産、傘生産、販売など槙田商店のさまざまな分野のスタッフがつながってものを作っているからでしょうか。確かに店頭でも「他にはなかなかない傘ばかりですね。」ってお声をいただけるのが嬉しいです。

もちろんOEMの良さもあります。生産数もまとまりやすいですし、きちんと槙田商店の技術をふんだんに活かせますから。でもちょうどタイミング的には自分たちのオリジナルを始めたのはよかったと思います。社内はもちろんですが、産地の仲間達と外に出て行っていろんな方々と出会い、経験を積んで自分たちがどんな会社でありたいかが見えてきたんです。

それは「商店でありたい」ということ。

Q:「槙田商店の“商店”ですね。」

そう、社名に入っている「商店」です。

一般的にファクトリーが作るオリジナルってファクトリーブランドというカテゴリーになるかと思うんですが、これってその工場が持つ品質や技術が伝わる価値があるんですよね。

もちろん槙田商店も生地作りに関わってきたファクトリーとしてその部分を誇りに思っています。

ただそれ以上に「商店」でありたいと思ったんです。

産地の仲間とプロダクトを直接売りにいくハタオリトラベルという活動に参加させていただいたのですが、ハタオリトラベルの一つのコンセプトはslow productsなんです。

ファクトリーであるかどうかではなく、富士山麓の小さな産地でずっと以前から培われてきた技術や暮らしの美意識みたいなものを作り手である機屋が直接お客様と会話させていただきながら伝えていくというもの。この活動で作っていたもの、やったことって、名前がないものだと思いませんか?だからワクワクしたんですよね。

「商店でありたい」という思いにはそういう活動範囲を広げていく中で、自分たちが何者であるべきかという試行錯誤が込められています。槙田商店は生地を織っていて、それを買ってくださる問屋さん達がおられ、ブランドの方々がいらっしゃる。でも一方で傘も作り、それを卸す仕事もあればオリジナルの傘を売ってもいる。槙田商店は何屋だ?となったら「商店です。」と言い切れる。なぜならいずれも大切なことは「お客様にとってメリットがちゃんとあるか。槙田商店でやる意味があるか」だと思っているからです。

「顧客目線」とよく言われることかもしれませんが問屋さんも顧客ですし、製品を使われる方もお客様。自分たちが商店でひとりひとりを接客させていただくように細やかにその方々にとってメリットがちゃんとあるものを作りたいと思うんです。

Q:「商店として大切にしていることは?」

だから品質は何よりも大切です。そして同様にコストも大事なんです。どんなにいいものでも価格とのバランスが悪いとよくない。満足して手にし、使っていただけるか、その気持ちに見合う金額で提供できるようにコストを考えることも槙田商店らしさだと思っています。大切に精魂込めて作ったものを喜んでもらいたいですしね!

オリジナル製品を作り始めたことで、嬉しい瞬間に出会うことが増えました。

たとえば高校の同窓会に行ったら「テレビで見たから買ったよ。使ったらすごく良かった!」なんて言っていただけたり、海外にいる友人にも日本らしい贈り物をしたいからと言って注文をもらえたり。

Q:「槙田商店の傘は何が特別なんでしょう?」

槙田商店の傘は美しいと自分たちでも思います。でも決してデザインという面では尖っているわけでも奇を衒ったものもないです。もちろん自分たちの傘だからかもしれませんが、街中でちゃんと目に留まるなあと感じていて。先日スタッフが東京出張の際、車で雨の街を走っていたら素敵な方がさしている傘、あれ、うちのだ!って見つけて嬉しくなったんですよなんて報告してくれました。私自身も銀座の通りで美しい婦人がリンドベリーのハーバリウム(植物柄)の傘をさしておられるのを思わず見惚れていました。傘なんて売れないよと言われながら出展したNYでもその後ご縁があり販売をしていたるのですが、お客様がNYで傘を使っていたら、通りを行く車の中から「Beautiful Umbrella!!」と声をかけられたのよと嬉しそうに教えてくれました。やはり出張の際にタクシーの中からうちの日傘をさしている方を発見!うちの傘はNYでも褒められる傘なんだと、とても嬉しかったです。でもなんでこんなにちゃんと目につくのかな?と分析すると槙田商店の傘はプリントではなく、糸を一本一本を染めてから織る先染め生地で作っているからだと。だからきっと色柄に立体感と深みがあり、雨に濡れたり、太陽にあたったりするとその美しさが際立つのかもしれませんね。

Q:「きれいな色が多いですね。」

派手な色を使うというよりも、世界に色が増えるといいなと思っています。コロナ禍以降世界がどんよりしていて、特に天気が悪いとグレーの世界になってしまいますよね。暑すぎる日もやっぱりうんざりして視線が下がってしまう。傘はそんなネガティブな日に使うもので、ものとしてもさしていない時は手を塞いでしまう面倒なものになりがち。そこで安い使い捨ての傘だと単純に手に持たなきゃいけない負担のみが残ってしまいます。でもきれいな色だったら、美しいものだったら少しだけポジティブに変換できるんじゃないかと。「素敵な傘ですね」って周りが褒めてくれることは人を嬉しくできるのと同時に「もの」の立ち位置も変えられるんじゃないかな。傘は服ほど体に近くないので、やっぱり「もの」なんです。だからこそものの力をちゃんと強くしてあげたい。安価で簡単なものもある逆風の中だからこそ長く使ってもらえるものを作っていきたいんです。

Q:「傘を通じてやっていきたいことはありますか?」

ものが変わると扱い方が変わり、行動が変わります。ちゃんと大切にしたい傘を作ってお渡しすることは単純な販売ではなく、傘を通じて丁寧な暮らし、いいものをじっくり長く使う楽しみをお伝えできたらと僭越ながら思っているんです。傘はどうしても失くしやすいからいい傘をさしておられる方が少ないのは事実です。おこがましいですが傘育もしていきたいです。
お客様からも言われるんですが、なかなかいい傘を買える場所がないということ。
「傘をちゃんと知って買える場所を作りたい!」とずっと思ってきました。はじめは都内で小さな店舗を持つことも考えていました。でも仲間たちと一緒に都内海外含めて販売する機会をいただき、いろんな方々に出会い、経験させていただいたのちに思ったことは、やっぱりこの地元できちんとやっていきたいなということ。この地域の風景、暮らし、そこでずっと培われてきたものづくりをお客様に見ていただきたいんです。イメージとしては複合的なサロンみたいな感じでしょうか。

ここ西桂、生地産地の歴史や確かなものづくりのこと、傘のことをお話しできる場所を作っていきたいです。その場所ではぜひ傘選びのお手伝いもしたいです。ポップアップなどでお客様とお話しさせていただいた際に気がつくことなのですが、傘選びは意外と何を基準にしていいかがわかりにくいとのこと。確かに、色柄だけでなく、体格に合う骨の数、サイズ、さらに使い方によって長傘がいいか折りたたみがいいか、あと色柄に関しても飽きる飽きないも大切な基準。空気と水が美しい西桂にお越しいただき、ゆっくりと生地や傘の魅力にふれ、自分にぴったりな傘選びをしていただけるそんな場所を近い将来に形にしていきたいです。傘の美しさを客観的に発見できる傘の写真展もいいなとか。

Q:「おすすめの傘はどれですか?」

全部おすすめなのですが、実際に傘って使われる方のお召しになっておられるファッションや風景との組み合わせで見え方は変わりますからね。
お洋服が華やかな方、色柄をよくお召しになる方は一見地味に見える無地や地模様ストライプといった紳士傘系もおすすめです。店頭ではやはり美しい色柄の傘の方が売れるんですが、実際にオンラインではこのベーシックラインがよく売れます。ビジネスだけでなくきちんとしたシーンでも自信を持っておつかいただける高級感もありますが、ファッションを引き立てるという観点でもおすすめです。
色という意味ではグリーンやブラウンの傘もあまり他では見られず、織生地らしい深みが美しいのでよくご要望いただきますね。

Q.「槙田商店を子供に継がせたい?」

自分も父親から受け継ぎましたし、槙田商店が続いていって欲しいです。でもそれは継がせるということよりも、続いていくための準備を自分はするべきだと思っているんです。
ものづくりを取り巻く世界の環境は変わってきています。そして槙田商店も変わり続けていると思います。お客様のご要望にお応えし、技術を磨いてきたところから、自分たちにしかできないものづくりを色や柄、質感、そして最終製品まで手がけられるようになったこと、安定した量を生産できる体制と細やかな要望に対応できる力、どちらも培ってきました。
ただその中で、素材の面では傘生地を織ってきたことからもポリエステルを使っている側面があります。今後、素材自体をどう扱っていくのか、もっとこの地域にこだわりつつも日本全国他産地とも繋がりを強くしながら、槙田商店らしい特色を出していくことも必要です。
服地、傘生地、さらには暮らし全般で使えるものへと広げていくには素材に向き合っていくことも考えたいと思います。
うちの企画でずっと活躍してくれているデザイナーがよく言うんです。
「槙田商店の生地がある暮らしを作りたい」って。
生地は暮らしに欠かせません。人の暮らしに美しい色や質感を添え、人と人を繋ぐ、槙田商店の生地がある暮らしを目指してこれからもものづくりをみんなでやっていきたいって思うんです。
それは生地屋でも傘屋でもなく、槙田という「商店」が語る言葉を持つことだと信じています。
西桂で1866年以来ずっとお仕事をさせていただいています。その間に世界も変わり、産地もさまざまな変化を経験してきました。でもこれから先、次の100年もこの美しい西桂から日本中、そして世界に美しいものをお届けし続けられるように日々努力していきたいですね。

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